3月12日、13日の2日間、JFAハウスにて第1回S級インストラクター研修会を行いました。
これまで、プレゼンテーション、コーチング、ITなどの技能を習得することを目的に実施してきた研修会ですが、今回はS級インストラクターの役割を見つめ直し、インストラクター間で確認、共有することを目的に行いました。
その一つの柱は「世界に送り出す審判員の育成」であり、アジアの中での日本の審判員の位置づけを再確認することでした。
4月より新たに審判委員長に就任する小川佳実氏は、昨年12月までAFC審判部長を務めており、その小川氏より「アジアにおける日本の審判員の活躍を求めて〜アジアの審判員の現状」というテーマで講演がありました。
その後、この講演を受けて、感じた危機感や反発力などをS級インストラクターとしてどのようなアクションにつなげていくかをディスカッションしました。
もう一つは「組織や人を動かすマネジメント」に磨きをかけていくことです。経営者としても豊富な経験、知識を持つ須原清貴審判委員会委員が「企業経営から学ぶマネジメント」というテーマで、実際に起こった事象を取り上げ、講義を行いました。経営者が問題解決に向けて次なる手を、どのような形で実行しているかを学んだ後、「情報伝達」「各地域・都道府県の活動」「全国大会・ミニ国体」に必要なマネジメントをディスカッションしました。
インストラクターコメント
小幡真一郎審判委員会副委員長・指導部会長
2つのテーマを軸に、12日①「始めるにあたって」「S級って何?」、②「地域別インストラクター分布図」、③「2016年S級認定審査要項」、④「S級インストラクターに求められていること」、⑤「アジアにおける日本の審判員の活躍を求めて」・「日本代表(各年代)の強化方針」、⑥「日本の審判員がアジアで活躍できていない現状分析(フィッシュボーン・特性要因図)と改善策」、⑦「まとめ」、13日⑧「前日のまとめ」、⑨「企業経営から学ぶマネジメント」、⑩「S級インストラクターの活動におけるマネジメント」、⑪「まとめ」、⑫「次回に向けて」という内容を各インストラクターがファシリテーター役となり進めました。
グループワークやディスカッションを中心に行いましたが、皆さん、その場でテーマを与えられ、十分な準備もない中、上手に参加者のフィーリングをキャッチしながら、テーマの核心をギュッとつかんで、実にクリアに進めていただきました。審判員を世界に送り出すには、トップレフェリーの強化だけではなく、地域・都道府県の指導育成に力をかけ、リスクを負ってでも変革しなければなりません。そのためには会社経営と同様、資源の分散をせずに、ヒト、カネ、モノ、ジカンをいつ、どこに、どのように使うかを考えることが大切であり、時には「やらないことを決める」ことも必要だと思いました。
今後、S級インストラクターは世界を意識しながら広い視野とテクニカルな指導に加え、人と人とのつながりを強固にするマネジャーの役割を求められているように感じます。一方、グループワークだけでなく、全体の中で個人に、細かく、具体的に「何を」「なぜ」「何のために」「いつ」などの質問をしながら問題の本質的な原因をつかみ、具体的な解決策を見つけ全体で共有するというファシリテーションの方法を学んだことも大きな収穫でした。
受講者コメント
布瀬直次 S級インストラクター
グループワークでのブレーンストーミングで「S級審判インストラクターに求められているもの」、またフィッシュボーンにより「テクニカルに関するインストラクターの課題」を通して、活動の現状と課題について活発な意見交換と発表まで行ないました。さらに前AFC審判部長の小川佳実氏による「アジアにおける日本の審判員の活躍を求めて」の講義では、アジア各国の審判員の審判技術が急速に向上している現状を知り、将来性豊かな日本人審判員の発掘・育成・強化が喫緊の課題と意識することが出来ました。2日目は、「企業経営から学ぶマネジメント」では、企業クライシスに見るマネジメントから、審判インストラクターの役割、求められるスキル、求められる人間性の重要性を再確認し、仕組みやプラットフォームの構築が急務であることを学びました。S級インストラクターとしていかにマネジメント力を高めていくかを強く意識することの出来る内容となりました。
太田潔 S級インストラクター
1泊2日と短いものでありましたが、参加したインストラクターがそれぞれ忌憚のない意見を出し合って内容の濃い研修となりました。ややもすると目の前の審判指導に追われて毎日を過ごしてしまいがちになりますが、本研修会に参加させていただきS級インストラクターや審判インストラクター全体の役割や課題を改めて整理でき自身の気持ちを新たにしました。審判員の皆さんのために何をすべきなのか、何ができるのかを改めて考える良い機会となりました。