FIFAビーチサッカーワールドカップロシア2021(8月19日~29日)に波多野祐一ビーチサッカー国際審判員が、FIFAフットサルワールドカップリトアニア2021(9月12日~10月3日)には、小崎知広フットサル国際審判員と松崎康弘FIFAインストラクターが参加した。それぞれに各大会の振り返りや大会で得られた収穫や課題について聞いた。
※本記事はJFAnews2021年12月に掲載されたものです
大会屈指の好カードで円滑な試合運営を実現
これまでフットサルワールドカップの審判員は、各大陸のサッカー連盟が候補者を立てて研修会を行い、FIFAが承認する形でしたが、今大会は最初からFIFAが候補者を選出してトレーニングを行い、そこから正式なメンバーを選任する形でした。候補者に選ばれたのは今年1月で、以降2週間に1回ぐらいのペースでトレーニングをし、7月に最終メンバーに選ばれました。
リトアニアには9月1日に入り、10日間ほど座学とフィットネストレーニング、今大会から導入されたビデオサポート(VS)のトレーニングを行いました。担当したのは全部で9試合。主審・第2審判を担当したのはグループステージのベネズエラ対コスタリカ、アルゼンチン対セルビア、ラウンド16のスペイン対チェコ戦で、さらに準々決勝スペイン対ポルトガル、準決勝ブラジル対アルゼンチン、3位決定戦といったビッグゲームで第3審判を務めました。
印象深いのは、第3審判を務めた準決勝ブラジル対アルゼンチンです。イエローカードが8枚も出る熱戦でしたが、スペイン人の主審と第2審判をピッチ外からサポートし、私からファウルアピールをして採用されるなど、みんなでビッグゲームをつくり上げることができました。そして、いろいろな方から「ストレスなく試合を見ることができた」と言っていただきました。
小崎審判員が第3審判を務めた準決勝のブラジル対アルゼンチンより
現地では新型コロナウイルス感染対策として2日ごとに抗原検査を行い、レフェリーチーム全体が陰性であることを確認しながら進めました。試合前日は試合に向けてのトレーニングを、試合翌日はリカバリートレーニングをするなど、試合以外の日も何らかのトレーニングをすることが多かったです。
ビデオサポートはゲームを守る重要な役割
今大会から導入されたVSは、チームチャレンジによって判定が正しいかどうかをその場ですぐに確認し、明らかに間違えていれば判定を変えられるシステムです。チームや選手、観客も含め、その判定を引きずることなく次のプレーに集中できる効果があり、シンプルながら非常にポジティブなものと感じました。最初はチーム側も慣れておらず、「こんなタイミングで?」というリクエスト(レビューの要求)もありましたが、徐々に順応し、コーチがリクエストしようとするのをピッチ内の選手たちが「やっても判定は変わらないから」と止めるシーンもありました。そこまで理解が進めば、本当に大事な局面で、ゲームを守るために使えるようになりますよね。
また、リザーブアシスタントレフェリーの役割が明確になったことも大きかったと思います。第3審判と分担してベンチとコミュニケーションを取ることができますし、フットサルではGKが頻繁に攻撃参加しますので、その際に反対のゴール付近の視野をカバーすることもできます。VSと併せてピッチ外の副審が主審と第2審判をサポートできる体制が整ったことは試合運営上非常に大きかったと思います。
個人的には、今大会が国際審判員の集大成となりました。フットボールは選手やコーチ、審判員、観客の皆さんも含め、みんなで楽しむ懐の深い競技だということを学びました。11年にわたる国際審判員の経験は、今後の人生につながると感じています。もちろん今後、若い審判員がワールドカップのような大きな舞台に立ち、力を発揮するためのサポートはしていきたいと思っています。どのような形になるかは分かりませんが、できる限り協力していきたいと考えています。
vol.3は2/10掲載予定です。