6月19日(日)に以下のチーム・審判に協力いただき、午前にU-10、午後にU-12の交流戦(4チーム総当りの6試合ずつ)を行いました。
目的:
・育成年代においてサッカーとフットサルの双方をプレーする環境を作ること
・サッカーとフットサルの双方を理解した指導者をより多く生み出すこと
・U15フットサルルールの変更に向けた新ルールのトライアルを行うこと
・サッカーとフットサルの親和性をより具体的な要素に分類する検証すること
ルール:10分-5分-10分 ランニングタイム
ピッチサイズ | ボールサイズ | ルール | |
---|---|---|---|
U-10 | 36m x 18m | モルテン3号球 | 制限なし・FIFAルール |
U-12 | 36m x 18m | ムニッチ3号球 | *特別ルール |
*インプレー中については、GKのプレー制限(U15ルールにある制限)はなし。
ただしゴールクリアランス時はGKのプレー制限(U15ルールにある制限)はあり。
参加チーム(順不同):
U-10 豊島SC/東急SレイエスSC/GINGA FC/リガーレヴィア葛飾
U-12 フーガドールすみだ/リガーレヴィア葛飾/本町田FC/東急SレイエスSC
審判(順不同):
U-10 小川和則氏/奥間崇広氏/豊原秀史氏/松尾晋氏
U-12 小川和則氏/奥間崇広氏/松尾晋氏/小倉敬右氏
コメント
小西鉄平 JFAフットサルテクニカルダイレクター・普及ダイレクター
まずはこのようなフットサルとサッカー、双方を楽しめる環境を作るために、多くの指導者やチーム、そして選手、保護者の皆様がその意に賛同してくださり、本交流戦が開催できたことに感謝いたします。
JFAフットサル委員会としては、育成年代、特にU-10、U-12、そしてU-15年代くらいまでは積極的にフットサルやサッカーの双方をプレーすることを推奨し、「コンビネーションフットボール」と呼んでいます。それは双方のスポーツが全く同じスポーツではなく、それぞれに特徴的なプレーがあり、それらを小さな頃から経験することで、後にその選手の武器を増やすことにつながると考えているからです。
今回の交流戦では、日頃サッカー、フットサルの双方をプレーしているチームを中心に参加してもらいましたが、その割合は様々で、サッカーの割合が多いチームもあれば、フットサルの割合が多いチームもあります。そういった環境面の違うチーム同士の対戦で見えてきたのは、子どもたちの適応、順応力の高さです。初めのうちは慣れていないフロア、フットサルシューズ、そして小さなボール(U-12は若干重量もある)でのプレーに戸惑う場面も見られましたが、すぐにその環境に慣れ、必要なプレーを選択し、プレーを楽しんでいたと感じます。その中でもやはり普段の活動においてサッカー、フットサルの双方をバランスよく取り組んでいるチームはその適応力は高かったようです。
また特に適応力があるチームの選手たちは「予測力」の高さも感じました。フットサルは常に次のプレーをイメージしながら行うことで、より高いレベルのそれが可能となります。それがないと高次元のレベル、すなわち楽しくプレーすることにも制限がかかることに繋がってしまうのです。
目の前の現象を解決する能力も大切ですが、もっとも大事なのは目の前にある現象を意図的に作り出すことであり、またそれを的確にプレーするためにも「予測力」はフットサルをプレーする上で重要な要素です。この予測力を高めるためにも「コンビネーションフットボール」に育成年代で取り組んでいくことはとても有意義だと考えています。
延本泰一 JFA審判委員会 フットサル・ビーチサッカー部会長
▼GKのプレーの制限について:GKのボールを遠い位置で受けるようなプレーをほとんどしないので、あまり影響を感じられなかったが、前へ出てクリアする時に浮き球を蹴っても反則にならないのは自然に感じました。
U-12でゴールクリアランスはハーフウェーラインを越えてはいけないということで、選手は慣れるまでは、今は超えてもよいのかダメなのか多少混乱があるように感じましたが、審判はゴールクリアランスのときには1人がハーフウェーラインの延長にポジションを取るか、副審が監視できるので対応は問題ないかと思います。
ボールを保持した後にパントキックやドロップキックをすることはなく、ハーフウェーラインを越えた先の味方に直接フィードするような戦術を使えることをより意識したときにどの様に変わるのかが見えてくると思います。
▼ピッチの大きさについて:なんとなくピッチを出てしまうボールは減って、ライン際で1対1の勝負をしたときに出てしまうなどの場面が多い印象でした。ランニングタイムで時間も短いので、ピッチが広すぎて試合が間延びすることもなかったので、本日の印象としては適切な大きさだと感じました。
前川義信 JFAフットサル指導者養成ダイレクター
▼GKのプレーの制限について:印象としては良かったと思います。DFの背後のカバーリングが直接前線につながり得点に繋がったシーンや、GKの補給からディストリビューション、ダイレクトカウンターで得点になったシーンなど、これらのシーンが行われても反則にならないのはとても自然に感じました。
日常のルールの影響からGKのプレー関与(捕球、カバーリング、サポートからの触球)に合わせて、奥行きを取る選手は少数でしたし、この瞬間に次のアクションについて背後を取る選択肢を持てていないシーンは多くありましたが、新しいルールが適用され浸透すれば、より活動的なゲームになる印象を受けました。
これはFIFA競技規則で行われていたU-10の試合を見て感じていたことですが、キャッチ後も自分の筋力では難しいスローを行うシーンが頻繁に見られました。ここでキックによる展開を選ぶ(指導者が教える)ようになることが予測されます。この選択肢が頻繁に行われる状況は避けたいと感じました。
また、自陣FKをGKが直接相手陣に配球するシーンがありました。試合ではノーファールで流していました。私もそれでいいと思いますが、アウトオブプレーという言葉より、クリアランスからの再開時のみとし、該当のケースに関してはGKのプレー制限の対象外とするのが良いと考えます。
▼ピッチサイズについて:最適なサイズではないかという印象を持ちました。U-10では幅を使ってプレーするシーンはなかったですが、U-12になると幅と奥行き、特に幅を使ってプレーするシーンは確実に増えました。
このサイズになって、認知して、決断して、実行するにあたり必要な時間を得た印象を持ちます。改めてスペースと時間は密接な関係性があると学びがありました。このサイズ変化(縦4m横2m増)によって、ラインアウトの回数は若干ですが減った印象あります。
最初に書きましたが、ピッチサイズ感としては最適という印象を持っています。そうなると次はその中の模様をどうするのか?という課題と向き合わなくてはならないと考えます。
▼ボールについて:今回利用した、バウンドは同じでより重いボールにいい印象を持っています。ただ日本で展開する場合、なじみのある材質で凹凸がない球体にする方が良いと思います。
今回の特徴のボールでゲームをした結果、懸念されていた相手陣KIからの蹴り込みによるゴールは6試合で0点、相手陣KIでのa la corta(チョンドン)からのゴールも6試合で2本でした。これは単にボールだけの問題ではなくピッチサイズもあると思いますが、明らかにキック力任せのフィニッシュに対する影響はあったと思います。
そのためパスによる相手陣深い位置へ入り込み(ダイレクトな展開も、細かくつないでいく展開も含めて)フィニッシュを狙うシーンが増えた印象です。キックの距離の長短に関わらず、またボール特徴によりしっかりとボールをとらえてキックを行わないと届かないシーンも散見しました。反面、しっかり面を作ってボールにコンタクトすれば、高さに関わらず強いボールが飛んで行きました。このような現象から、今回のタイプのボールはキックの技術は磨かれる可能性があると思いました。
稲葉洸太郎 JFAフットサル普及担当コーチ
全体的に楽しい雰囲気で、チーム内外での選手同士のコミュニケーションもたくさんあり、各チームのコーチ陣やJFAメンバーのコミュニケーションも取れていたので、とても有意義な時間だったと思います。
プレー面では、数人で同じ絵を描いてゴールまで行ったときは、共通認識を感じましたし、サッカーのピッチでも同じようにみんなが絵を描いていければ再現性の高いプレーが頻発していくのではないかなと思いました。また、抜き切らずにずらしてシュート・ボールキープなどの個人プレーや、パラレラ、テンポ、ライン間、3人目の絡み方などの個人戦術などがたくさん出てきたことも良かったですし、キーパー攻撃の効果的なシーンも出ていたことも素晴らしかったです。
フットサルはボールに触れる機会が多いので、個人個人の見せ場や良いプレー悔しいプレーをする機会が多くあり、いろいろな経験を積めるのではないかと再確認できました。
中山雅雄 JFA普及ダイレクター
サッカーとフットサルは競技としては独立しています。しかし、サッカーの普及の観点からみると、サッカーとフットサルの親和性は非常に高く、特にグラスルーツとしてサッカー(フットボール)をプレーする上では、2つを区別することは非常に難しいです。足を使ってボールを操作し、チームとしてゴールの数を競い合うスポーツの楽しさを、サッカーとフットサルの区別なく多くの人に親しんでもらえる環境を整えていくことが大切だと考えています。
選手の育成といった観点からみると、フットサル、サッカーそれぞれに、より適した技術や戦術があります。それを互いに生かしていくことができるのではないかと思います。サッカーの立場から、フットサルからヒントを得るとしたら、フットサルでよく使われる、足の裏を使ってのボールコントロールは、サッカーでも効果的に使えそうです。ボールをコントロールする幅が広がります。また、GKを含めた5人のプレーヤーの位置関係の考え方や、そこを基点としたボールの動かし方は、サッカーのビルドアップでボールを前に運ぶために必要な要素を浮き彫りにしてくれます。小学校年代のサッカープレーヤーがフットサルを経験することのメリットはデメリットよりも多いのではないでしょうか。だからこそ、サッカーの指導者にもぜひ、フットサルに触れてほしいと思います。
仲野浩 JFAコーチ関東女子担当チーフ
今回の交流戦を見て、「育成年代においてのフットサルの重要性」と「女子の環境に応じたフットサルとの関わり」の2点で気付きがありました。
「育成年代においてのフットサルの重要性」としては、フットサルでのオーガナイズ(フロアでのプレー経験とローバウンドボールの活用、GKに関わるルール、コートのサイズなど)によって、育成年代の選手に獲得させたい認知・判断・実行のサイクルの習慣化や、攻守におけるテクニックや個人戦術の獲得に役立つと改めて思いました。
また、「女子の環境に応じたフットサルとの関わり」としては、女子の中には11人集まることが難しいチームがあるので、フットサルも選択肢の1つとしてフットボールに関わり続けることは、サッカーファミリー拡大にも繋がるものだと感じました。
サッカーもフットサルも同じ「フットボール」として指導者が理解を深め、ぜひ多くの選手に経験させてあげてほしいと思います。