国内でサッカーの審判員資格を持つユース審判員はどの程度いるかを考えたことはあるだろうか。サッカー審判員の全体の登録数は26万1149人。そのうち、ユース審判員は9万3648人であり、全体の約36%を占めている(2021年4月1日時点)。
資格取得の動機はさまざまだが、競技規則やその精神を学ぶことで、自身を高めることに役立てたり、選手として日頃自分たちが活動しているリーグの帯同審判員を行うために、資格を取得したりするケースもある。また、リーグやチームの方針としてチーム単位で資格を取得するケースもある。皆さんのチームでも、このような理由で資格を取得しているケースが多くあるのではないだろうか。
選手の活動がメインで、たまに審判員を担当する(またその逆もある)。自分たちがサッカーを楽しむために、そのリーグの運営側の一員としても関わることは、視野を広げることにもつながる。若い年代からさまざまな角度でサッカーに触れる機会を設けることは、大変すばらしい取り組みだ。
ほとんどの指導者の方々は、若い審判員が一生懸命取り組んでいる姿を温かく見守り、かつ一人の審判員として接してくださっている。こうした対応にリスペクトを感じる。私自身も選手の皆さんが実際に帯同審判員として審判員を担当している姿を見たことがあるが、日頃プレーをしているからこそできる、的確な判断をしている審判員(選手)が多い。
だが、一部では試合中にストレスを抱えた指導者が、かなり強い発言に発展してしまうこともあると聞く。少なくともその姿を、他の選手たちは見ている。もしそれを見ていた選手たちが「明日はわが身か」と思ってしまえば、審判員を担当することは極力避けたいと思うだろう。このような気持ちの人が増えてしまえば、審判員をやる人はいなくなり、試合をすること自体が難しくなる。
審判員(選手)の心情を察すれば、自分よりも年上の指導者の目の前で審判を担当することや、正しいジャッジをして選手にストレスを与えることなく、審判員としてその試合を立派に務めたいという感情から、多少なりとも選手としてピッチに立つのとは違う緊張感があるだろう。
若い選手は指導者から掛けられる言葉が、時として人生に大きな影響を与えることもあると聞く。現在活動をしている審判員も同様だ。
一人の審判員として接するからこそ本気なのだという意見もあるかもしれないが、ユース審判員は、18歳以下で守られるべき対象であることも心の隅に留めておいてもらいたい。だから甘やかすということではない。伝えた方が良いと思ったことがあったときは、「育てる」という気持ちを込めながら伝えてほしい。
役割に関係なく、サッカーに関わる人たちをみんなでもっと育てる環境ができれば、より身近に感じることでき、さらに互いに対するリスペクトの気持ちが育まれるのではないだろうか。
【報告者】山岸佐知子(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2022年5月号より転載しています。