J1J2の主審担当のみを対象とした「2016年第2回J1・J2担当主審研修会」を5月14日(土)、15日(日)にJFAハウスで実施しました。
今回の研修会は「Jリーグにおけるレフェリングの振り返りを行い,プロリーグを担当するレフェリーチームとしての判定、マネジメントの統一性・一貫性を高めること」を目的に行いました。
4月に行われた、J1J2を担当する主審・副審を対象にした研修会で改めて判定をする際の判断の考慮点を整理したものを、今回の研修会では実際の試合で判定精度を高めるために、ポジショニングやプレーの予測などをどう立てていくかを、また、今回もレフェリーチームとして試合運営を円滑に行うためにマネジメントの必要な場面での基本的手順や、行わなければならないことを再確認したうえで、映像を見ながらどうしたら試合運営を円滑にできたかなど、実際の試合映像を用いてディスカッションをし、判定、マネジメントの統一性・一貫性を高めることを行っていきました。
講師コメント
上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャー
今回のJリーグ担当主審研修では、コンタクトプレー(タックル)が昨シーズンより増加傾向にあり、それに対応する為にペナルティエリア内での事象を含めた判定の統一性、一貫性を高めること、また、スムーズにフリーキックを再開させるためのマネジメントについて事例を上げながら共通認識を図りました。
プログラムでは、的確な判定を下すために、①「アプローチの方法」⇒「接触部分」⇒「ダメージの程度」と3段階に分けて判断の為の考慮点を整理する。②考慮点を的確に認識するためのポジショニングは何処か。③適切なポジショニングのために、次のプレーへの予測・読みをどう立てるか。以上について議論し、方向性を合わせることができました。また、マネジメントについてはプレーを再開させるまでのプロセスを一つ一つ確実に行う、その為にも気づきをもってリードすることが重要となることが確認されました。今後、試合は更に激しく厳しいプレーが多くなることが予測されますが、審判員には選手が安全に安心してプレーに専念できるゲームコントロールの実践に期待します。
参加者コメント
塚田健太 1級審判員(群馬県)
研修の冒頭、今シーズンのこれまでの試合の分析結果報告があり、昨シーズンと比較してボールを奪ってからゴールまでの時間が短くなっていることがわかりました。この時間は年々短くなっています。私自身も実際にレフェリーを担当している中や試合を観ている中で、中盤の高いエリアでのプレスが激しさを増し、ボールを奪い素早く前線にパスを送る回数が増えていると感じていました。激しさを増せばレフェリーが判定を下す場面も増え、レフェリーにはより精度の高い判定力が求められます。
また、ボールを奪ってから前線に送られるまでの時間が早くなれば試合を重要な判断を求められる場面が増えます。今回の研修ではそうした現代の非常に速い戦術に対応するために、今シーズンの様々なシーンをVTRで確認しながら判定する際の考慮点を整理したり、的確な判定を下すために必要なことなどをディスカッション形式で話し合ったりしました。私たちレフェリーは試合中に起こる様々な場面で瞬時に判断を下さなければなりません。自分自身で試合を振り返ったり他のレフェリーの試合を観たりして分析することはもちろんですが、今回の研修のように多くのレフェリーと意見を交わしながら考慮点を整理したり的確な判定を下すために必要なことを考えたりすることはとても有意義な時間となりました。
今回の研修で得たものを今後の試合に活かすとともに今後の自分が担当した試合の分析にも活かし、より良いレフェリングにつなげていきたいと思います。また、よりスピーディな戦術に対応できるフィジカル面を強化し、より良い試合の一助になれるように日々研鑽を積みたいと思います。
上村篤史 1級審判員(愛知県)
一つの判定を下すことでその試合の流れや勝敗が変わってしまうことがあります。今回の研修では、一つ一つの判定を丁寧に確実に行うことの大切さを改めて学びました。それには判定の根拠を明確にすることが大切です。今までの試合の映像を見て、競技者が「どこから、どのように、どの部位で、相手競技者のどの部位に接触しているか」を見極め、正しい判定につなげようとグループディスカッションを行いました。
映像では競技者の行き方に注目するあまり、接触の瞬間を見極められず、正しい判定に導けなかったケースもありました。最後まで見極め、競技者がどうしたからこういう判定を下すという根拠をもち、試合を運営していきたいです。そして、正しい判定をするためには、正しいポジションから見る必要があります。試合中、次の展開を予期・予測をしながら、正しい判定をするためのポジション修正が必要だと感じました。これからの試合でも、FKの際の手順、壁のマネジメントなど基本をおろそかにせずに、目の前の事象を一つ一つ対応していきたいと思います。選手がプレーに集中し、サッカーの魅力が詰まった90分にできるように今後も努力を重ねていきたいです。