関西サッカー協会(FA)の審判委員会育成部は2016年以降、同協会技術委員会と連携し、U-14地域トレセンに18歳以下の「ユース審判員」を派遣している。きっかけとなったのは日本サッカー協会(JFA)が行っていた取り組みだ。15年、JFAはフットボールフューチャープログラムトレセン研修会U-12を創設した。以来、同プログラムやナショナルトレセンU-14地域対抗戦でユース審判員の研修も併催し、実戦経験を積む場を創出。研修会では、「審判と技術の協調」を議題にディスカッションすることもあった。
滋賀県FAの審判委員長で、関西FA審判委員会育成部のユース担当を兼務する鳥家浩司さんはこの活動を視察し、「審判員も選手同様、レベルアップしなければならない」と刺激を受けた。つてをたどって関西FA技術委員会の責任者であるU-14トレセンの土井和則さん、U-12トレセンの冨田悟史さんを紹介してもらい、関西のトレセンでもユース審判員を登用できないか掛け合った。技術委員会の反応は前向きだった。
「トレセン活動の際、それまでは掛け持ちで審判員を務めていた指導者が試合とその準備に集中でき、審判サイドはユース審判員に経験の場を設けることができる。Win-Winなので『やりましょう』と話が進みました」(鳥家さん)
オペレーションの細部も詰めた。審判員を守るために、トレセンの試合には必ず審判インストラクターが参加。チームが審判員のレフェリングをどう見たか、審判員はどのような意図で判断を下したかを明確にするため、試合が終わってすぐ、センターサークルの近くに審判員、両チームの指導者(監督またはコーチ)、審判インストラクターが集まり、5分ほど意見交換することにした。「監督会議などの場で事前に『こういうことをやります。ご協力お願いします』と伝えた後、トレセン当日にも『今日、試合後に時間をいただけますか』と了解を得てから試合後の話し合いに臨むため、いつも前向きな意見交換ができています」と鳥家さんは語る。
「一生懸命で、よく走ってくれる」と、徐々にユース審判員の存在が認知されるようになり、18年以降はU-12関西トレセンにもユース審判員が参加。信頼関係が深まり、22年には新たな試みとして女子のユース審判員にもU-12関西トレセンで笛を吹く機会を提供した。
若い審判員にとって、実戦の場は成長を加速させる場になっている。数年前、奈良でU-14地域トレセンに女子のユース審判員が参加し、その試合で審判員として初めて警告を出した。躊躇してもおかしくない場面だったが、その審判員は、試合後に指導者に「あの警告は妥当でしたね」と認められたことで自信を深め、現在は2級ライセンス取得を目指しているという。
昨年6月、U-12地域トレセンにてユース審判員の研修会に参加した面々
とはいえ、鳥家さんはトレセン活動を審判員としての成長だけの場にしてほしくはないようだ。「ユース審判員のみんなにはレフェリングだけして帰るのではなく、自分がトレセン活動を成功させるための一人だという自覚を持ち、周囲に手を貸してほしいと常々、伝えています」(鳥家さん)。協力してくれる大会やチーム、選手たちへのリスペクトの念を持ち続けながら、ユース審判員の育成に尽力する。
※本記事はJFAnews2023年8月号に掲載されたものです。