VAR導入はチャレンジ
日本サッカーのさらなるレベルアップは、Jリーグの発展なくしてなし得ることはできません。そのJリーグは、2030年までにヨーロッパ5大リーグに追いつき、追い越すことを目標に掲げています。ヨーロッパ各国のリーグですでに導入されているVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)がJリーグには導入されていないとなったら、その目標を達成するのは難しいでしょう。日本サッカーの発展のためにも、JFAとJリーグが協働してVARを導入します。
男女のFIFAワールドカップはもちろん、U-20やU-17といったアンダーカテゴリーのワールドカップ、オリンピックなど、あらゆる世界大会でVARが導入されています。そういった舞台で世界を相手に戦う際、国内リーグで普段から触れていないと、VARに対応するのが難しくなります。
事実、昨年のFIFA U-20ワールドカップポーランド2019のラウンド16の韓国戦では日本の得点がVARの介入でノーゴールになるシーンがありましたが、日本の選手はゴールの判定に喜び、その後、ノーゴールになって動揺しているように見えました。一方で、韓国の選手たちは、すでにKリーグでVARが導入されていることもあり、冷静に対処していました。普段から経験しているかどうかが大きく影響する、というのが如実に分かるシーンでした。世界的な流れに取り残されないためにも、JリーグでVARを導入することの意義は非常に大きいと思います。
試合を見ている方々には、VAR導入によって「映像によって判定を決めるようになるんだ」と思われがちですが、あくまでも主審が最終決定をするものです。映像を見ているのは生身の人間であるため、映像に頼りがちになってしまいますが、国際サッカー評議会で定められたプログラムのもと、厳しい教育を受けて全てをクリアしたライセンスを持った審判員だけがVARを担当します。
VARの導入は我々にとっても、審判員にとってもチャレンジです。主審が映像を見て何となく判定を変えてしまったり、映像に頼ったりするような事態は避けなければなりませんし、この機会をピッチ上のレフェリングのレベルアップにつなげていかなければなりません。VARを経験すれば、客観的に事実を把握できるようになります。その中で見るべきポイントを整理していけば、この経験が実際にピッチで主審を務める際、正しい判定を下せるようになるはずです。
選手や監督の方々はもちろん、ファン・サポーターの方々にも、VARは何をするためのものなのかを理解していただかなければなりません。VARのコンセプトは「“正しい判定”を探すもの」ではなく、「“はっきりとした明白な間違い”を認識し正すためのもの」であり、最終的にはピッチ上の主審が判断しているということを理解していただきたいですし、我々も頻繁に伝えていかなければなりません。
審判員、その審判員をサポートする我々、それぞれがやるべきことにしっかり取り組んでいきますし、それらを発信していくことがJFAの役割だと思っています。みんなで一緒に日本サッカーを発展させていきましょう。